ヴィパッサナー瞑想体験記 ~体験としてパンニャってきたよ~ 第四話

ヴィパッサナー瞑想体験記 ~体験としてパンニャってきたよ~ 第四話

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ヴィパッサナー瞑想体験記 ~体験としてパンニャってきたよ~ 第一話

 

◆第四話 体の中の気持ち悪い何かが、ゴリゴリ・ムワムワと表出した3日目

 
2日目に、煩悩もまたよし、という受け入れがあり、
夜寝れないってことも、なんか気にならなくなってきたのだけど、
相変わらず、いっしょの部屋の人の歯ぎしりが過ぎるので、
それは気になってしまっていて、
僕はそのひとのことを「ハギス」とあだ名をつけていた。

 
ホールでの瞑想中、そのハギスはひどい咳をしていて、
僕の右斜め後ろだったのだけど、
瞑想に入るかなーっていうところで、
大きな咳が聞こえてきたり、妙におおきなため息をしたりするので、
正直言って、「じゃまだなー」と感じてしまっていた。

僕の右隣は、2日目の夜に、
「後ろからしぶきが飛んできてしんどい」
とアシスタント講師に伝えていて、前方に移動していた。

僕はといえば、移動したいという思いもあったけど、

「気になっていることを、気にしたくない」

という

「執着してない!」って思いたい感情が強く、(それって執着してるんだけどさ)
いたしかたなし、と自分の意識に集中することをしていた。

でも、やっぱり
「なんでマスクしないんだろう?」
って思っちゃう気持ちがムクムク湧いてきてしまう。

コースマネジャーが気を使って、
休憩時間に飲むお茶のポットの隣にのど飴を置いていたり、
階段のわきに目立つようにマスクを置いてくれていたりするのに、
ハギスは一向にマスクをしようとしない。

 
ここで「聖なる沈黙」が、重くのしかかる。

 
普段の僕だったら、
「せっかくマスク用意されているのだから、したらどうかな?」
と、言ってしまうからだ。

みんなが思っているだろう、
ならば自分がその任を負おうとおもってしまう自分の性格。

しかし、当然ながら、聖なる沈黙は他者とのいかなるコミュニケーションを抑制するので、

言いたいけど言えない、

という感情がモヤモヤと続く。

 
しかし、黙って座ってるといいことがあるもんで、
気づくのだ。

「ああ、おれは、自分に対するイライラより、
人に対するイライラのほうに、けっこう心もってかれるな」

と。

他者への執着が見えてくる。

 
日常では、その他者への思いは、何らかの形で出そうとするよね。
本人に伝えたり、
態度に出したり、
本人じゃない気の置けない人に話したり。

でも話せない状態に置かれると
自分の中で対話するしかなくなる。

 
自分の感情と向き合うことになる。

気にしないでいよう、っていうのは執着の否定だから、楽にならない。

 
ああ、と気づく。

 
普段の僕は、
正義感とか、当事者意識とか、リーダーシップみたいな、
そういう大義名分を自分の中に「つくりだし」て、
そうして、
自分の中に生まれた、こういう執着を、
自分の中で消化せずに、誰かにぶつけていたんだなあ、
と。

 
なるほど、聖なる沈黙ってのは、意味があるや。

 
放屁フェスティバルになっているこの状態で、
普段なら人目を気にせずゲラゲラ笑いだしちゃう僕も、
表情を変えずにただ生きているんだけど、

「自分の感情に素直になる」
って、してた自分の行動も、
それは、人の気持ちを顧みずにしていた、自分勝手な行動も数多くあるなあと。

 
そんなことを感じ、

「よし、ハギスはハギスだ。ハギスも咳がしんどかろう、
身体がしんどい中で座っているのだから、彼は彼でやれることをやっているのだ」
と、自分の中でふっと手放し、
意識をまた呼吸にもっていきはじめた。

 
こうしてしばらく経つと、
自分の身体に何か変化が起きてきた。

3日目の夕方、1時間のグループ瞑想だったようにおもう。

 
左のこめかみに重さを感じ、
それを見つめながら、呼吸をしていると、

キュッ

とこめかみがひきつる感覚を持つ。

そのひきつりを抑えるでもなく、ただ見つめていると、
そのひきつりはとても大きな波になってきて、
頭のてっぺんの方に移動していく。

それもまたそのままにして、意識を波に合わせていくと、
その波は、今度は首筋におりてきて、
首筋が隆起するのを感じるようになる。

 
波はぐりぐりっとした隆起となり、
ゆっくりと身体中を動いていく。
背中に、腰に、ももに、足に、
そしてまたももからおなかに、胸に。

再度首から顔にもどってきて、
口に至った時には、
コロッケの顔真似のように、
口は大きくゆがみ、変顔オンパレードが始まる。

このときには、筋肉の隆起により、
呼吸も厚く、ゆっくりしたものになり、
身体の変化を意識で追うのが精いっぱいとなっている。

ではそれは苦しいかといえば、そうではなく、
自分の中で何かがうごめいている感じが、なんとなく気持ちよく、
自分でない何かのような感じで見つめている自分もいる。

トランスしてきた、と感じる。

 
口から、舌に意識がうつり、
舌の奥の筋肉がけいれんし、
舌を思いっきり突き出す動きとなったとき、

「吐きそうだ」

と気づく。

焦るわけではないが、

「ぼくはいま、何かを吐いている」

と意識が自分の身体を見つめている。

 
そして、ふと思う。

「ああ、これは何か自分の中にたまっているものを吐いているんだな」

と。

 
この数か月自分を苦しめた、いやな経験で感じた、
嫌悪や後悔や非難や悲しみが、
なんともいえない、重さと厚さをともなって、
自分の中からグワーンと出ていく。

そんな感覚を持つ。

そうしたら涙が出てきて、
僕つらかったんだな、いやだったんだな、って、泣けてきて、
大変だったね、でもがんばったね、って言ってやりたくなって、
そうしたらふっと力が抜けて、舌は引っ込み、

するとまたたく間に意識は、
涙を我慢するためにぐっと力が入っていた下腹の丹田に動き、
今度は丹田あたりが収縮し、
上半身が手前に傾き、座禅しながら深くお辞儀をするような姿勢になる。

それは楽な姿勢ではないのだが、なぜか自分はそうせざるを得ない。

ほぼクッションに顔が付きそうな状態になった時、
なぜそうなったのか、ここは覚えていないんだけれど、
家族の顔が浮かんできて、
僕は、妻の気持ち、息子の気持ちを自分が「感じるのを、感じ」はじめる。

 
そのとき僕の身体は、思い浮かべた人が、感じているであろう感情に呼応するかのように、
激しく脈動していく。

そのとき、僕は感じるのだ。

「ああ、そうか、そんな風に感じていたのだね、ああ、これはしんどかったね。ごめんよ・・・」

 
今書きながら思うのは、
これはあくまで僕の想像する感情だから、ほんとにそうかどうかはわからないわけだけど、
それがあってるかどうか、が大事なことではなく、
自分は、相手の感情を自分ゴトとして受け取るということを、日ごろやっているだろうか、
という問いが大事なわけで。

というのも、僕は、
うっすらと「きっとこの人はそう感じているだろうな」というのは日ごろからわかっていて、
でも、自分の感情を優先して、見てみないふりをしたり、
自己正当化をして、気づきを押し殺したりしている。

だから、
感情をわかる、というのは、
身体的にわかってこそ、わかったことになるのではないか、ということだ。

(うーん、まだうまく書けない。
というか、多分これって言葉にすればするほど、つたえたいど真ん中から離れていくんだよね。
思考の世界で見ようとしても、みえない世界の話なんだろうな)

 

 
話は戻って、僕が瞑想中にこの軽いトランスに入って感じたのは、

「感情と身体がどれだけつながっているか」

ということだった。

もっというなら、

「身体はこれだけいつも教えてくれているんだ」

ということだ。

 

脈動は止まらず、じとっとした汗をかきながら、なすがままにしていると、
1時間の終了を告げるゴエンカ氏の声が聞こえてくる。
なんというのかわからないけれど、お経の歌だ。

ああ、気が付くと数十分たっていたのか。

 
アシスタント講師の、
「少し休憩します」
の声を聴き、皆が席を立っても、

僕は茫然としたまま、しばし座り込んでいた。

 
この3日間の中で、なにか違う感覚を得た高揚感と、
自分の中から何かが吐き出されていった解放感とともに。

 

そして、この経験の次の日、
ヴィパッサナーのやり方についてようやく説明を受けるのだが、
(これまではアーナーパーナーという呼吸に意識を傾けることしかガイドされない)

 
そのヴィパッサナーのやり方こそが、
今僕がやっていたことと近しいということを知り、
「うわあ」と心で独り言ちるのだった。

なんというか、
「そうなるようになっている」
という感じだ。

 

しかし、何日か後に知るのだ。
このトランスのような高揚感を求めてはいけない、
この感覚を追い求めてはいけない、
ということに。

これがまた深いのだが、また次回以降に。

 

ちなみに、瞑想ホールで放屁はないのかというと、
さすがにあまり聞こえない。

かくいう僕は、すかす技術に優れているので、クッションに沁みこませる対応をとっている。

みんながどうかは、知らない。聖なる沈黙だから。

しかし、たまに

ポウ

という音が聞こえる。

そして僕はその音のわけをしっている。

あれは、屁がえりだ。

 
ぼくは心で思う。
屁がえりは、体に悪いよと。
そして音は、意外に大きいよと。

 

つづく。。。
ヴィパッサナー瞑想体験記 ~体験としてパンニャってきたよ~ 第五話

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