利他とは何か?社会のためにという概念を問い直そう

利他とは何か?社会のためにという概念を問い直そう

こちら、「ひどい話だなあ」と思ったこと。
 
この国には、
 
倫理観を持つ=お金を稼いではいけない
 
というのがイコールで扱う、思い込みが跋扈しているように思う。
 
あたかも、
 
お金を稼いでいる人が、倫理観がないかのように、思う人が、まだいる。
 
この既成概念が足かせとなり、
 
今回の記事で取り上げた
「医者なんだから、世のため人のために尽くすために、身を粉にして働きなさい。奨学金が返せないなら、こちらの言うことを聞きなさい」
 
みたいな、思考停止したやり方がまかり通るんじゃないかと思う。
 
そんなことしてたら、医者になる人いなくなっちゃうよ。
 
このまえも友人の投稿で知ったけど、
若手医者(30代)の突然死がすごく増えているんだって・・・
 
働く人を追い込むような社会通念を、なんとかしないといけない。
 
致知で、
「利他に生きる」という特集があったけど、
利他に生きることと、自分を犠牲にして苦しむ人生を送ることはイコールじゃないと、ぼくは思うんだけどなあ。
 
以下引用

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若い医師達にもっと自由を!~今、医学部の地域枠と専門医制度で起きていること~

 
つくば市 坂根Mクリニック
坂根みち子
 
2018年8月1日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

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先日、ある大学の医学部に地域枠で入学した学生のご両親が相談に来た。地域枠とは、一定期間指定地域に勤務すれば奨学金返済免除を受けられる制度である。
昨年ハフポストに掲載された拙文、厚労省による医師管理の厳格化は正しい道か ~これは研修医奴隷制度ではないのか(1)を読んでのことだった。
相談者のご子息は、一般入試で良好な成績を取り入学したが、親が病気だったため奨学金借りて地域枠に入った。奨学金は返せば辞退可能と書いてあった。細かい説明はなかった。最近になり、やはり親の介護の問題もあり地元に帰りたいと、奨学金を返して地域枠を辞退しようと大学に相談。すると、そんな事で辞退は出来ないと、医師になろうとする者が親の介護を理由に約束を破ってはいけないと言われたとのことだった。
それでも辞退したら、合格自体が取り消しになってしまわないか不安でどうしたらいいか困っている。このまま奨学金借りつづければそこに9年間残るしかない。親としては、こんな制度と知っていたら絶対に地域枠を勧めなかった。本人はもし地域枠を変更出来ても、地域枠という履歴が残れば、厚労省の方針で研修先から受け入れてもらえないのではないかと心配している、とのことだった。
法的には、大学は地域枠残留を強制は出来ないはずで、いざとなったら法律家に相談すること、そんな事より、今の日本で医師免許を持っていれば、受け入れてくれる所はいくらでもあるので、まず勉強をして力をつけることが大切。医師は実力さえあれば、世界中どこでも働ける、というアドバイスをした。
 
医師は不足している。医師は余ると30年以上いわれ続け、交代制勤務の前提なく医師充足の需要予測を出し、実際には各地、各領域で医師が不足し悲鳴が上がっている。足りているのは、大都市の開業医だけであろう。
医学部の定員は平成19年度7625人→平成29年度9420人まで増えたが、医学部定員に占める地域枠の割合も、平成19年度地域枠183人(2.4%)→平成29年1674人(17.8%)と大幅に増えた。要は、各地で一斉に、若い医師達を長期間地域に縛り付ける制度を開始したのである。
 
何故これが「奴隷のよう」なのか。
地域で働くという条件で、奨学金を借りて入ったのだから義務を果たすのは当たり前と思うかもしれない。だが、日本の条件は諸外国と比べても格段に厳しい。
1.御礼奉公の義務年限が、6年から12年と非常に長いのである。18歳で入学して最短で24歳で卒業しても30歳から36歳まで、人生の最も伸びる時期、ライフイベントの多い時期に同じ地域にいなくてはいけないのである。
諸外国では似たような制度はあまり見当たらない。アメリカにはない。同様な制度があるオーストラリアでも4~5年の義務年限である(2)。そして産休取得や代診、学会参加もしやすいよう整備されていると言う。フランスでは、医師偏在を理由に、政府により強制配置的な政策が取られそうになったとき、研修医を中心に1か月間のストが起き、そのストは医師の各種労組だけではなく、学術団体であるフランス医師会も賛成したという。結果、医師過剰地域での開業制限と保険医を認めないという案は廃案になった(3)。
 
2.奨学金の一括返済問題:奨学金の返済をして「足抜け」しようにも、例えば私のいる茨城では、入学時にさかのぼって10%の利息を付けて一括返済しなければいけない、(月15万円の貸与で利息約320万円、合計約1400万円を1ヶ月以内に一括返還)と言う法的に問題があるレベルの高利貸し制度になっている。これもかなり問題である。
 
3.説明責任を果たしていない:地域枠を選択する時に、それがどういうものか、しっかり説明されていない(説明されているところもあるとは思うが)。18歳で将来の働き方について具体的に想像出来る学生は少ない。医学部がバブル化している現在、少しでも入りやすい所から入れば、後から何とかなるだろうと思っていることが多い。現に今回の相談事例も、いざとなれば奨学金を返せば何とかなるだろうと思っていたと、細かい説明は全くなく選択してしまったと言っている。こういう例が多いのではないか。
更に入学後、彼らのキャリア形成や医師としての倫理観の醸成を含めた教育的サポートをしているのであろうか。一旦入ったからには「道義的責任がある」と声高に叫ぶだけでは人をつなぎ止めることは出来ない(4)。
 
4.後出しじゃんけん問題:厚労省は昨年より、地域枠の学生名簿を作成し、それを配布して地域枠の対象者から地域枠外の医療機関への申請があっても認めないように厳重な管理を始めた。更に、地域枠の対象者を研修医として選んだ地域指定枠以外の病院には補助金削減と言う罰を与える事も決定した。このような厳しいペナルティについて今年医学部に地域枠で入った学生が説明を受けているかどうかも怪しい。昨年度までの地域枠学生にとっては明らかに後付けじゃんけん条項(5)で、厚労省はやり過ぎである。
ところが、7月27日のm3で以下のような報道があった(6)。
厚生労働省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(部会長:桐野高明・東京大学名誉教授)は7月26日、2018年度から臨床研修を始める新卒医師で、従事要件があるにもかかわらず、地域枠を離脱した地域枠制度利用者を採用した9病院に公開でヒアリングを行った。構成員からは「制度の根幹を揺るがす」「奨学金を返済すれば良いというものではない」「大学病院や国立病院機構が含まれているのは驚きを禁じ得ない」などと、厳しい指摘が相次いだ。(引用終了)
 
さて、どれだけ大量の離脱者が出たのだろうか。
記事を読むと、2018年度開始の地域枠研修医805名中、地域枠離脱者はたったの10人(1.3%)だった。これに対して上記厚労省の医道審議会では、これらの離脱者を採用した医療機関を「公開ヒアリング」したのだという。
なんという了見の狭さだろう。
制度上、採用する側に非はない。このような公開処罰のようなことを、厚労省が無自覚に行なっていることに愕然とする。これは、地域枠離脱者を採用しないようにと言う圧力以外の何者でもない。
筆者は前出のハフポスト(1)にこう書いた。
結婚等で指定地域を離れたい時、働きながら出産や子育てをするために親の近くへ行かざる得ない時、もしくは親の介護が発生した時、どうしても研修を受けたい場所が出来た時等々。医学部を卒業し人生が大きく動く時に、18歳の頃の決定に少しの変更も許さないシステムというのはいかがなものだろうか。
これが、これから医師として人生を輝かせていこうとする者たちへの扱いとして適しているものなのだろうか。まるで奴隷制度のようである。ここには、次世代の若者をエンカレッジして育てようという意識がまるでない。
 
どこの医学部に入ろうが、どこで働こうが、基本的に若い医師が増えて力をつけてくれれば、どこかで人のために役立っている。彼らは日本の宝なのである。縛り付けてどうする。各地域は地域枠という名目で若い医師を縛り付けるのではなく、自ら進んで選んでくれるよう工夫すべきである。例えば医療困難地域の多いオーストラリアでは、Rural generalist(へき地専門医)が僻地医療を支えているが、その研修プロゲラムはブランド化され競争率が高いと言う(7)。
これほどまでにがんじがらめの制度設計に走るのに、誰も異を唱えないというのも驚きである。毎回同様の指摘をしているが、意思決定組織のメンバーに多様性がないのだ。医療界のリーダー達は人を育てるということを一体どのように考えているのであろうか。
近視眼的な考え方に縛られて若者の未来を邪魔するのではなく、選択肢に多様性を持たせたほうがいい。損して得取れ、と言うではないか。
地域の医師不足には、むしろシニアの再トレーニング→短期招聘ルートを確立したほうがいい。学ぶ意欲があって地域のために役立ちたいというシニアドクターは結構いる。
 
また、本年度から始まった新専門医制度もひどかった。法的根拠がないにもかかわらず、専門医制度という名のもとに研修医を東京一極集中させてしまった(8)。ここでも若い医師達は年余にわたり修行の場所を管理、制限される。これよる弊害は1.3%の地域枠離脱者問題より余程大きく深刻である。この制度には90%以上の研修医が参加している。内科、外科、小児科、産婦人科・・地域医療に欠くことの出来ない重要な科のトレーニングを積んでくれるはずの若い医師達が、この制度の不備のために突如として地方から姿を消し、東京へ、そして眼科や耳鼻科等、いわゆるマイナー科へいってしまった。今まで築き上げてきた地域でのトレーニングシステムが、体制が整わないままに走り出した日本専門医機構によって暴力的に破壊され、若い研修医達が来なくなって茫然自失状態の地域が多発している。新専門医制度は、地域医療崩壊の最後の一押しをしてしまったにも拘らず、この制度にかかわった誰一人責任を取っていないし、改善もされないままになっている。1.3%問題を厳格化している場合ではないだろう。
 
専門医制度も医学部地域枠も、結局大局観なく制度をいじる厚生官僚と医療界の大御所達にゆがめられてしまった。ビジョンを持ったリーダーのいない国の悲劇である。
 
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引用おわり
 

★追記
医師のことを思っていない振る舞いは利他ではなく、自分のことしか考えていないことになりますね。
社会のために尽くしなさい、という「社会」というものが、自利のみかんがえ、相手の立場(個人の立場)を考えないのならば、その社会から人が離脱していくことになってしまう

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